忙しくて休む暇もないとき、日々の喧噪から解放されて長期休みでも欲しいなと思う。
自由な時間が無限にあるとき、忙しく動き回っていた日々をすこし懐かしいなと思う。
モノで溢れて踏み場もない部屋にいると、早く片付けてすっきりした空間にしようと思う。
モノが整頓されて鋭角の多い部屋になると、散らかった空間に囲まれるあの安心感が恋しくなる。
あれこれ言われるのがいやだからと、はやく独り立ちして解放されたいと思う。
独り立ちしてなんでも思い通りにできるようになると、叱ってくれる人が居なくて心細くなる。
ひとは、ないものねだりな生き物。
先日、部屋の窓から見た美しい夕日の事を考える。
向かいのアパートや一戸建ての並びがすべて影の一部となって姿を消し、空は、ただ赤く、赤く、そこにある。
サンフランシスコからの帰路で、明朝に渡ったSan Mateo Bridgeから見た景色を考える。
橋全体が、藤色と山吹色、灰色の混じりあった彩色の、まるで雲海のような朝靄に埋もれて、海の水面も橋も空もすべてひとつになっていた。
大自然の成す雄大な景色を前に、胸の当たりに直射日光からの熱をじりじりと感じながら、言葉を失う。
なにに捕われて、自分を見失っていたんだろう?